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才能の抽象化と役割演技|Apr. 2-8 2018

 

企業においては競争戦略の観点から多くの議論がされてきましたが、こと個人については競争戦略の観点から語られることが少なかったのではないでしょうか。

 

 

ことスポーツの世界では例外です。

イチロー選手が「.220でよければ40本のホームランを打てる」と発言していたことは、ファンの間では有名です。これは、自分の持っている才能(希少性)を踏まえてのポジショニング戦略であると換言できます。

 

これはビジネス人材でも同じことが言えるのではないでしょうか。

企業内でも、人材市場内でも、結局重用され、評価されるのは「他の人にできないことができる人」だと思います。

 

であるならば、『会社の掲げる理想の人材になる』という目標設定は、『重用され、評価される』ためにはなりません。尤も、『最低限できて当たり前』でないといけないでしょうが、他の人がカバーできる程度のレベルにさえなればいいと思うのです。どうせ『会社の掲げる理想の人材』を目指して、そのプロフェッショナルになるような人間は必ずいるのです(もしいなければ、そのポジションを狙えばいいだけですし)。

 

ただ「他の人にできないことができる」だけでも意味がありません。サッカーがうまい野球選手はいらないことと同じです。

つまりは『実務レベルで業務フローをイメージして、こんな人がいれば円滑に回るな』みたいなイメージがあるべきです。少し前のレアル・マドリードでは、スター選手こそ揃っているものの、守備が緩慢なために結果を残せずにいました。そこでジダンが重用したのが、一級品のスキルこそないものの、汗かき役を一手に担えるカゼミーロでした。

 

とはいえ、いくらレアルに汗かき役が必要だったとしても、クリスティアーノロナウドがあくせく守備をするのも非効率です。何が言いたいかというと、『自分の才能を弁えつつ、環境における希少性を発揮する』ことが必要で、さらに深掘りすると『様々な役割演技に応用できるように、自分の才能をできる限り抽象化して捉えること』が必要だということです。

 ジダンが持つ希少性は、端的に言えば『頭がキレること』だと思います。しかし、これを『アシストパスを出すこと』だと考えると、そこでしか能力を発揮できません。『頭がキレること』と一段抽象化して捉えることで、チームをモチベートする役割や、監督として指揮を振るう役割においても、違和感なく希少な才能によって重用されるのです。

 

 

 さらには、この作業はこれからの社会を見据えるのであればますます重要であると理解できるでしょう。

 変化の時代において、安定とは固定ではなく変化です。当然大きな企業は動きやすい小さな組織の集合体として分解・再構築されるでしょう。事実、パナソニックなども社内ベンチャーシリコンバレーに構えたりしています。

 

そうした社会では、雇用の流動化は盛んになります。同じ仕事を続けるわけではないのですから、プロジェクトごとに必要な人材を集めてくるスタイルの方が合理的です。人材価値そのものの把握がより合理的になれば、企業という組織そのものが消滅してもおかしくないくらいです。

 

 上記のような雇用形態まで見据えると(そうでなくとも大なり小なり雇用が流動化されるのはほぼ間違いないはずです)、プロジェクトごとに必要とされる人材しか生き残れません。『様々な役割演技に応用できるように、自分の才能をできる限り抽象化して捉えること』はこうした場面でも役立つはずです。

 

 

 まとめると、『様々な役割演技に応用できるように、自分の才能をできる限り抽象化して捉えること(×その道を極めること+最低限の要求は超えること)』こそ、重用され、評価されるための競争戦略だと考えたのが、今週のハイライトでした。